2013年04月号 震災から二年後のオフィスニーズ

テナント、オーナーの意識に変化が?
二年前の東日本大震災後に、弊社が発行する物件情報誌BB142号でも特集をしましたが、震災を機にテナントや オーナーがオフィスビルに求める条件がより高度に多様化しています。直接被災しなかった地域にもサプライチェーンや電力の問題、交通網麻痺による帰宅困難、社員の安全と生命をいかにして守るかなど、様々な課題を浮き彫りにしました。震災直後は、原発の放射線漏れなどから西日本への本社移動やテナント需要などが取り沙汰されましたが大きな混乱はなく、日時の経過と共に冷静に緊急時の対処を家庭や職場で考える機運が高まってきたと言えましょう。
このたび、三菱UFJ信託銀行がまとめた調査結果が上梓されました。タイトルは「今、求められるオフィスビル像とは」~社会配慮型オフィスビル普及のために~で、その一部をここにご紹介します。 調査対象はビルユーザー(企業)、ビル賃貸仲介企業、ビルオーナー、アドバイザー(企業向け)からなり、56社・82件(回収率70%)の回答を得ています。同調査の特徴は、オフィスビル選定時に重視する項目やビル性能・管理体制上で重視する項目をキーワード選択と自由記述で回答し、自由記述についてはキーワードに置き換えて集計・数値化していることです。 これにより、震災後のビルユーザーはどこにウェイトを置いてビルの選定をしているのか、また、どのような視点で何を評価しているのかが可視化されるようになっています。詳細な調査結果は割愛しますが、ビルユーザー(企業)が求めるオフィスビルの条件として
◆災害に強く安全
(耐震性、非常用発電設備、セキュリティレベルが高い、危機発生時のサポートも含めビル管理体制が充実)
◆事業変化に対応しやすい
(フロアが広く形状がよい、空間が小部屋割り対応可能、原状回復の柔軟性)
◆過ごしやすい
(空調・照明設備が充実、日常管理がよい、IT環境がよい)
◆省エネルギー性が高い
(電力使用量やコストの節約につながる高効率性・省エネ性能が充実)
上記が挙げられており、従来から重視されてきたビル性能項目に加え、社会性のある項目である事業継続、社員の安全、防災性能、節電・省エネルギーなどが「今、求められているオフィスビル像」と結論付けています。 さらに「社会性」についてオフィスビルをワーカー、経営(マネジメント)、社会(市民)という3つの視点で整理し、社会配慮型オフィスビル評価指標を可視化しています。


